東京・神田に、集合住宅と私設図書館を複合した施設を提案した。
敷地の周りには、中層のビルがたくさん並んでいた。ビルはそれぞれ役割が決まっていて、どこか窮屈な街並みだった。
けれどそれは、「隙間がたくさん並んでいる」とも言えて、そんな風に街のネガポジを逆に考えてみると面白いなと思った。
ふつう、「隙間」というものは例えば「ビルの隙間」というように何かに伴って生じる副次的なあるいは脇役的な存在だ。
それを、隙間を積極的にデザインすることで、空間の主従を分からなくできないかと考えて、「スキマのビル」という順番で呼ぶことにした。
まず、住居群を2つ想定し、それぞれ離して配置することでスキマを生じさせる。
次に、住居群を被膜のような外壁で包み込み、スキマ側だけ覆わないように残す。こうして、スキマが2つの切断面に挟まれた、特別な空間になる。
スキマには、螺旋状に登っていくスロープを設け、住民のための豊かな動線とした。住民共有の図書室として働く。
また被膜と地面の隙間は書店、被膜と空の間はシアターとして設計した。書店→図書室→シアターは、スロープによって一連なりになっている。
パブリック、スキマ中心にプログラムが連なっていく。
各階の中央に設けられたパブリックな共有図書室から離れるにつれプライベートな空間に変化していくように設計した。
スキマに向けては、SOHO(住居と一体となったオフィス)を設け、住民の仕事場や書斎・語学教室などとしての使用を想定した。
住居はSOHOのさらに奥にあるため、街から離れた感覚になれる。住居にはベランダからアクセスする仕組みとし、ふつう隅に追いやられるとしてしまう空間(水回りなど) を窓際に並べた。
そして全体として柔軟な平面構成を可能にするために、壁は全て本棚や収納棚と行った可変的なものになっている。
スキマを巡るスロープは、公共性のある場所に繋げるように設計を進めた。
皇居ランを終えた人が銭湯に立ち寄ったあと公園で休んだり、あるいはサラリーマンが昼休みにボーっとしていたり、そんなアクティビティをスキマに引き込んでいった。
本屋からスキマの図書室を登っていき、機械室ホワイエを経て屋上劇場に至ると、そこからは隣のビルの屋上の忘れれた鳥居が見える。
こうした副次的且つパブリックな空間が連なり、日常的な体験/光景が気付かない内に変わっていくような状態が構築される。
This is a proposal for a housing complex, aiming to find a new meaning in the "in-between" spaces of buildings. The site is located in the central area of Tokyo where mid-tall buildings stand shoulder to shoulder creating a lot of gaps.
Two volumes of housings are covered by two continuous steel shells, which only open to the in-between space.
A spiral slope sawing two volumes together and offers an enriched experience of access to each housing. This in-between space works as a semi-public library of the residences.
The space between the ground and the shell works as a bookshop, and the space between the sky and the shell works as a theater.
These three in-between spaces are connecting together to create a trajectory of public spaces connecting to an existing public bath and a park.
課題第一週目にトムさんにコンセプトスケッチを見せたら「こんなF*ckingなスケッチ何の役にもたたない!」と言われた。
そのころ、住宅の設計から建物のスケールが大きくなって、なかなか制作が進んでる感じがしなかった。
そういう焦りもあって、第二週目からは結構まじめにやったように思う。
コンセプトスケッチはどこかへ行ってしまった。
スキマの話などをきちんと整理できたのは、課題が終わってからかもしれない。
制作が終わってから、一つの建物が都市の風景を捉えなおすきっかけになるんだな、という感覚を持てた。
そしてその感覚はコンセプトスケッチからは離れていなかった。コンセプトを一度離れ具体的にもがくのもいいな、と思う。
ご指導頂いた教員の方々と制作を助けてくれた方々に深く感謝します。